日刊スポーツ
2011年6月15日発行 夕刊フジ
2007年10月15日発行 東京スポーツ新聞
“業界の暴れん坊”の異名を取り、嶋村かおりをはじめ多くのグラビアアイドルやミュージシャンを世に送り出してきた名プロデューサーの宮西渡氏（65）。昨今では珍しいほど義理人情を重んじる真っすぐな性格は多くの人を魅了し、芸能界はもちろん、スポーツ選手に格闘家、政治家、闇社会の住人に至るまでその交遊関係はとてつもなく広い。そんな宮西氏が、これまで封印してきた業界裏話を芸能生活45周年を迎える今、ついに激白する。
嶋村かおりをプロデュースし世界を股に掛けて活躍した当時、海外のスポーツ紙の1面を飾ったことはあったものの、宮西氏はこれまでの45年間、決して表舞台に出ようとはしなかった。「音楽活動をやっていた時は別だけど、それを辞めてからは裏方一筋。自分はあくまでプロデューサーだからね。タレントを売り込むためには何だってやるけど、表に出るのは好きじゃないんだ」 しかし、最近になってその名前が一度だけ新聞や雑誌の紙面に登場したことがある。元モーニング娘。の加護亜依の引退騒動の時のことだ。「モー娘っていうのが売れていることくらいは知っていたけど、メンバーの1人に加護ってコがいるっていうのは正直知らなかった。ただ、人づてに『彼女をどうにか救ってやれないか？』って頼まれてさ」 このとき宮西氏は加護の顔さえよく知らなかった。だが、加護の出身地である奈良県の後援会長に人を介して相談され、芸能界で中ぶらりん状態となった加護に救いの手を差し伸べようとしたのだ。「初めはなんだかよく分からなくて、よくよく話を聞いたらタバコが原因だって言うだろ。たしかに未成年の喫煙は犯罪だよ。彼女は2度過ちを犯した。でも、クスリや殺人ならともかくしょせんはタバコだろ？ 彼女が有名人だからあれだけ問題になったけど若いやつらでタバコ吸っているやつなんてくさるほどいるじゃないか。罪は罪だけど、彼女が本気で復帰したいなら更生できると思ったんだ。自分もガキの頃はワルかったし、犯罪スレスレのこともやったからね（笑い）」 当時の加護は芸能界でもかなりの影響力をもつ大手プロダクションから干された立場。名のあるプロダクションでさえ加護の知名度や商品価値を分かっていても、そう簡単には手も口も出せない状況だった。そんな中、この男は動いた――。その背景には芸能生活45年の重みがある。「結果的に彼女は親とか、周りの大人とか個人的なしがらみもあってウチには来られなかったけど頑張ってほしいよ。ただ、正直今のままだと復帰はムリだろうな。彼女は今（※取材当時）男とニューヨークにいるみたいだけど、復帰したいなら本当の意味で自立しないとダメだ。男を取るか、芸能界を取るかだな」 宮西氏は加護についてこう語る。厳しい言葉ではあるが、芸能界を知り尽くしているからこそタレントに強いプロ意識を求めるのだ。そして、そんな思いの裏には宮西氏にとって忘れられない1人の女性タレントの存在があった――。 （金久保茂誉）
2007年10月16日発行 東京スポーツ新聞
芸能界はもちろん、スポーツ界に格闘界、政界に闇社会に至るまで幅広い交遊関係をもつ名プロデューサーの宮西渡氏（65）。数々のグラビアタレントやミュージシャンを世に送り出してきたが、45年間もの芸能生活を振り返るうえで欠かすことのできない1人の女性がいた。
自らの音楽活動に終止符を打ち、宮西氏は72年に芸能プロダクション「Zプロモーション」を立ち上げる。「プロデューサーとしてはゼロからの出発だからZEROの頭文字を取ったんだ。それにアルファベットで『Z』は最後に来る文字。普通はみんなはくを付けるために『A』とか頭の方をつけるだろ？ でも俺は『Z』。後には引かない、ひたすらバチーンと前に進むんだ！って思いを込めたんだよ」と命名の理由を明かす。 自身が音楽活動をしていたことから、はじめはミュージシャンのプロデュースを手掛けた。「音楽業界には仲間が多かったし、昔からの顔見知りにはずいぶん助けてもらったよ。とくにバーニングプロダクションの周防会長やバーニング出版の樋口さんにはいろいろとお世話になったね」 その後も宮西氏は多くのミュージシャンをデビューさせたが、88年5月に一つの転機が訪れる。「ある日、知り合いのカメラマンが俺んところに芸能界を目指している25人の女のコを連れてきたんだよ。『社長の目にかなうコがいればデビューさせてくれ』って。その中にかおりがいたんだ。初めて会ったのは彼女が高校2年生、まだ17歳の時だったな」 その瞬間が宮西氏と女優、嶋村かおりとの初めての出会いだった。「はっきり言ってもっとカワイイコはいたけど、彼女の目を見た瞬間に『一緒にやりたい』と思ったね。人間は目を見たら分かる。俺は幼稚園中退で学はないけど、人を見る目には自信があるんだ」と独特の表現を交ぜながら嶋村との出会いを回顧する。 ここから宮西氏と嶋村との二人三脚での戦いが始まる。宮西氏はあえて嶋村をそれまでプロデュースしてきたミュージシャンではなくグラビアアイドルとして売り出す。「当時はまだグラビアアイドルという職業が今ほど定着していなかった。俺はそこに目を付けたんだ。手っ取り早く知名度を上げるには雑誌の表紙に出すことが一番いいと思ったんだ」 とはいえ、音楽業界には知り合いの多かった宮西氏も、雑誌にはほとんどツテはなかった。「とりあえず手当たり次第、出版社に電話を掛けまくったよ。いきなり電話をしたところで、向こうだって忙しいからほとんど取り合ってくれない。資料を送っても連絡一つ来なかったり。そんな時は自分から編集部に行き、直接編集長に会って売り込んだね。断られたって問題ない。何十回でも、何百回でも売り込みに行ったよ」 強引すぎる売り込み方だ。しかしこの結果、嶋村はわずか1年ほどで150誌以上の雑誌の表紙を飾り、200誌以上のグラビアに出演。テレビはもちろん映画の主演にも起用された。「嶋村は出会った頃、全然しゃべらないコでさ。俺が『なんでしゃべらないんだよ？』って聞いたら『大人はみんなうそつきだから』って言うんだ。まだ高校生でスレたところもあったしね。聞けば、芸能界にあこがれはあるものの『社長さん、もう遅いですよ』ってあきらめていた。だから『問題ない、問題ない。1年かかるところを3か月で10年かかるところを3年でやればいいんだよ！』って言ってやったんだ。俺はその言葉どおりにやっただけ。でないと“うそつき”になっちゃうからさ」 こうして嶋村は500誌以上のグラビアに出演し、海外でもフォトジェニック賞など数々の賞を受賞。国際派セクシー女優として世界を股に掛けて活躍するまでに至ったのだ。 （金久保茂誉）
2007年10月17日発行 東京スポーツ新聞
前人未到の22冊にも上るセクシー写真集をリリースした嶋村かおりを筆頭に、数多くのグラビアタレントやミュージシャンをデビューさせた“名プロデューサー”宮西渡氏（65）。浮き沈みの激しい芸能界の荒波を45年もの間“誠の心”で生きてきた。そのルーツは1本のギターとの出合いにある。
昭和17年、香川県高松市で生まれた宮西氏は、喧嘩に明け暮れる青春時代を過ごしていた。俗にいう不良少年だ。「当時は体が小さいのがコンプレックスで強くなることばかり考えていたね。13歳から少林寺を習ったり、ボクシングに興味を持ったりしたのもすべて強くなるため。何かといっては喧嘩ばかりしていた。夢はボクサーかレーサー、芸能界になんて全く興味がなかったよ」と“青い時代”を苦笑いを浮かべながら振り返る。その後、不良少年は父の死をきっかけに東京へと目を向ける。「若くして父親が亡くなったのはショックだったね。それと同時に『俺の人生は50年。真っすぐに生きたい！』と思ったんだ。それでより広い世界、東京に上京しようって決めたんだ」 18歳にして家出同然に東京へと歩を進めた宮西氏。その瞳に映ったのは想像以上に魅惑的な世界だった。「初めて銀座を歩いた時はみんなかわいくて、カッコ良くて、こんな女を抱けたら死んでもいいと思ったね」 上京後すぐに不良連中とつるむようになった宮西氏は仲間に連れられ、当時、ライブハウス兼バーだった新宿の「アシベ会館」へと足を運ぶ。そこには不良連中はもちろん、バンドマンやアイドルなど数多くの芸能人も集まっていたという。「当時の不良連中は大半が音楽活動をやっていたから、自然とライブハウスがたまり場になっていたからね。そんな中、アシベ会館は不良たちだけでなく、渡辺プロのたまり場みたいになっていたんだ。ドリフターズのメンバーや中尾ミエ、園まり、伊東ゆかりといった面々も集まっていたよ」 そこでスタンダードナンバーやロックといった音楽に触れ、内田裕也やかまやつひろし、ジョー山中などの音楽に感銘を受けた宮西氏は自らギターを始めることになる。 19歳にしてアマチュアバンド「宮西渡とザ・ブルーサンダーズ」を結成。約1年後には、バンドマスター兼事務所社長となり「宮西渡とザ・スナッキーズ」としてプロデビューまで果たす。 とはいえ、いきなりプロデビューしたところですぐに観客を集めることはできない。「初めの頃はバックバンドをして食いつないでいたよ。当時、現場でよく会った桜井輝夫とザ・ドリフターズ（ザ・ドリフターズの前身）時代のいかりや長介さんにはお酒をごちそうになったり、女のコがいるところに連れて行ってもらったり、かわいがってもらった」 その日暮らしのバンド生活。それでも女には不自由しなかったようだ。「当時はツイストがはやってて。少林寺やボクシングの経験から足技には自信があったし、リズム感もあったからダンスが得意で大会で5回優勝したんだ。それで女のコから『ツイストを教えてくれ』って言われてね」 バンドとツイスト、女性にモテる2大要素を押さえていた宮西氏は「最高で17人と同時に付き合っていたよ。コトの最中に名前を間違えることもあったな。そういえば、某大物女優と関係を持ったこともあるよ。後に映画やドラマで主役を張るね。名前？ それは言えねえなあ（笑い）」 （金久保茂誉）
2007年10月18日発行 東京スポーツ新聞
“業界の暴れん坊”の異名を取り、嶋村かおりら多くのグラビアタレントやミュージシャンを育ててきた宮西渡氏（65）。信義を重んじる真っすぐな性格と面倒見の良さ、45年間もの芸能生活で培った人脈は芸能界にとどまらず、スポーツ界や格闘技界など他の業界にも広がっている
「人間はみんな目を見たら分かる。言葉が通じなかったら身ぶり手ぶりで思いを伝えればいいんだよ。人種や国籍が違ったってみんな人間なんだからさ」 口で言うのは簡単だが、宮西氏は実際にこれまで50か国以上を海外ロケなどで訪れ、そのたびに新たな“仲間”をつくってきた。 そして、国内でもその人脈は多岐にわたる。「俺もいろんなカメラマンを知っているけど、人間を美しく撮らせることに関しては№1だと思うよ」。宮西氏がこう太鼓判を押すのが友人のひとりである写真家の野村誠一氏だ。 野村氏は「GUESS」や「KAORI」など嶋村かおりの写真集を数多く手掛けているが、2人の関係は仕事だけでなく「プライベートでもよく食事に行く仲」だ。 また、宮西氏自身が元ボクサーということもあり、ボクシング関係者にも友人が多い。 とくに元日本バンタム級王者の山上哲也氏や元WBC世界ライト級王者のガッツ石松氏や元日本ミドル級王者の大和武士氏とは親交が深い。「ガッツさんにはアドバイスを頂いたり相談に乗ってもらったり、いろいろとお世話になっているね。山上会長とは一緒に飲んだり、ボクシングを教えてもらったこともあったな。武士は俺にとって息子のようなもの。今は俳優として頑張っているけど、これからもできる限り応援していきたい」と話す。 “息子”といえば俳優の木村一八とも深い信頼関係で結ばれている。「一八とはもう15年近くになるかな。はじめは生意気な野郎だったけど、歌を聴いたらビックリしてさ。こいつは魂を持ってるって感じたよ。一時期は周りの影響もあってわるかったけど根はすごくいいヤツ。人間としても役者としても俺はアイツを認めているよ。このまま大成してほしいね」と、まるで父親のように目を細める。 プロレス界の枠を超えて、格闘技界のカリスマとして君臨するアントニオ猪木とも親交が深い。「猪木会長とは知人を介して20年くらい前に知り合ったけど、ほんとにカリスマ性があるよね。いろいろ言われているけど、俺に言わせれば“人間国宝”のような人で心から尊敬しているよ」 そして40年来の親友なのが国際派アクションスターの千葉真一だ。「千葉さんとは、彼が足をけがしてオリンピックを断念し、東映のニューフェースになった頃からの知り合いだよ。俺にとってはすてきな俳優と同時に、同じ時代を生きてきたすてきな仲間でもあるね」と語る。 ほかにも、ここでは書き切れないが宮西氏の人脈は政界や財界、闇社会にまで広がっている。「俺は今までずっと人にだまされるよりも、人にだまされたいと思って生きてきた。結局、人と人との交流は魂のぶつかり合いなんだよ。だから俺と仲間たちはみんな“人間愛”で結ばれているんだ」 人と人との関係が希薄になっていると言われる現代。“業界の暴れん坊”は御年65歳になった今もなお“誠の心”で芸能界の荒波を一直線に生きている。 （金久保茂誉）
